FPネタ。
ジャンベマンに向かってはモノを言えない人々も、相手が学校の先生となると強気でモノが言えるようだ。Sécurité de l’emploiの歌い手は教師。ご近所の人にこんなことを言われても何も言い返せない。言い返しても無駄だと思うからだろうか。
« Bandes de fainéants, alors vous êtes déjà rentré, vous savez pas c'que c'est d'bosser, avec vos semaines de 20h, vous bossez bien moins qu'un facteur, et dire que je paye pour vos congés, et pis vous êtes même pas bronzé ! »
この歌に歌われる先生の苦労は、面白おかしく誇張してあるものの、実感としては現実に近いものだと思われる。夫と私の友人(リタのパパ)が中学で歴史と地理(Histoire-géo)を教えていて、さまざまな話を漏れ聞く。
先日、子供が小学校に通っている翻訳者さんと話をした。彼女はドイツ人。フランスの小学校の変なところの1つに「少なくとも子供が10歳になるまでは親が送り迎えしなければならないこと」を挙げていた。もちろん、危ない道を通って遠くの学校に通う子、電車やバスを乗り継いで通う子にはある程度の年齢になるまで付き添いが必要なのは当然だとしても、彼女の家は小学校の真ん前。玄関を出て、通りを横切るとそこが校門。それでも、必ず親が送り迎えしないと学校から注意を受けるし、他の親からもいろいろ言われるんだそうだ。
子供が誘拐される、親が離婚していて子供に会えないほうの親が学校に子供を連れに来る、交通事故に遭う。そういう出来事が起こる確率はたしかにゼロでないけれど、親がそばについていても起こる事故は起こるんじゃないか。それに、離婚していなければ子供をさらいに来る親なんてのは存在しない(まあ、あるとしたら子供を狙う変質者による誘拐か)。自宅勤務の翻訳者なら時間をやりくりして送り迎えできないこともないが(納期がきつい仕事を抱えていたら「今日は無理」と言いたい日もあるか)、フルタイムで働く親は、現実的な問題として子供の送り迎えをできないだろう。実際、皆さん、どうやって送り迎えしているんだろう?
そんなことより、児童・生徒は登下校中より学校内で危険な目に遭うほうが圧倒的に多そうだ。盗み、恐喝、暴力など、児童・生徒間のトラブルといってもかなりハードだ。所持品を盗まれる(それも正面から堂々と「よこせ」と言って取り上げる)話なんか、珍しくもなんともない。中学生になると体格のいい子もいて、警備員さんに暴力をふるって怪我をさせることもあるらしい。だからこそ、必ず送り迎えに行って、危険な児童・生徒の前に「怖いお母さん」として姿を見せて、「うちの子には手を出すな」と無言の圧力をかけるんだと言う人もいたなあ。
危険な児童・生徒は怖いものなしだから、教師に暴力をふるうことも当然ある。が、教師はそれに反撃しちゃいけない。それから、すぐ口出ししてくる親もストレスだ(今風に言うとモンスター・ペアレンツ。日本だけの現象じゃない)。でも、学校は自分を守ってくれはしない。校長が矢面に立ってくれることなんか、絶対に期待しちゃいけない。それらのことに気を遣いながら、質の高い授業を行なう。落第者なんか出してはいけない。
まあ、問題のある教師がいることも否定はしないけれど、教職とは、ストレスの多い仕事なのだ。真面目な教師ほど神経をすり減らしながら働いている。ようやく帰宅したら帰宅したで、ご近所の方に嫌味を言われちゃうわけだ。こっちは公務員。向こうは納税者として(どれほど納税しているのかは怪しいところだけど)公務員を食わせてやっている意識があるから、どうしても上から見下ろした発言になる。
引用した歌詞を、自分なりに訳してみる。
「(教師ってのは)怠け者揃いなんだね、へえ、もう帰って来たんか。あんたは働くとはどういうことなのかを分かってないよ。あんたたちは週20時間勤務。郵便配達人のほうがずっと働いてるよ。言わせてもらうけどね、私はあんたたちの有給休暇に金出してるんだよ。それなのに、あんたは日に焼けてさえいないじゃないか!」
週20時間というのは、法定労働時間が週39時間だった頃の名残で、いわゆるパートタイム勤務と言えばいいのかな。フルタイムの半分で20時間。象徴的な数字と言えるかな。今は週35時間になっているけど、パートタイムの20時間はそのまま維持されているようだ。つまり、「あんたたち、民間みたいにフルタイムで働いてないんやろ」と一方的に決め付けているわけだ。発言者は郵便配達人と比較している。郵便配達は午前中だけのようだし、午前中4時間×週5日で20時間くらいなのか。歌い手は家に仕事を持ち帰っていて、それに超過勤務手当てはつかないのだけど、ご近所の方はそんな事情も知らずに言いたいことを言う。
教師に限らず、今、フルタイムの職に就ける人がどれほどいるんだろう。さっき、教師の求人を検索してみたら、週4時間から35時間まで幅があったけれど、35時間での募集はごく少数。4時間、10時間の勤務では食べていけるわけがない。産休要員、病欠要員として数ヶ月間だけ募集されているものも目につく。人件費を削減したいのは教育現場も同じで、フルタイムで定年まで働くのはなかなか難しそうだ。
日焼けしていないことにまで文句を言われる筋合いはないと思うんだけど、納税者様はケチつけずにはおれないらしい。せっかく有給があるんだから、どっか行けよ。休暇を取らないんなら、有給要らんやん。てことか? でも、納税者様が言ったようにこの教師が週20時間しか働いていないなら、休暇に出かける資金はあるのだろうか。それとも、公務員は週20時間のパートでも(我々民間とは比較にならない)高給だという思い込みなのか。
そんな嫌味や言いがかりをやり過ごして家に入り、持ち帰ってきたものの添削を始める。家の外の話し声が聞こえる。
« Et j'compte même pas la sécurité d'l'emploi »
「私は職の安定なんか、あてにしちゃいない」
これは、家に引っ込んでしまった教師に聞こえるように、わざと大声で言っているんだろう。言い換えれば「あんたたちはクビの心配がないけど、こっちはいつクビになるか分からないんだよ」ということだな。教師のほうも、同じことを心の中で思っているだろう。こっちもいつまで働けるか分からないんだよ。契約を切られる前に、こっちがぷつんと切れてしまうかもしれない。
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