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2016年2月16日 (火)

翻:2016年2月半ばに自分が思うことなど

1月23日のテリラジ。何週間も経ってしまった。前と同じく、気になるトピックをメモしながら聴いた。数字のついた段落がメモしたこと。他の段落は、自分のメモをネタにうだうだ書いた。もっと早いうちに書いてたんだけど、いろいろあってアップが遅れた。


1.消費税転嫁問題。実際に査察が入ることもあるらしい。

フランスで営業する個人事業主としては、それなりに情報収集しているつもり。正直なところ、取引先が企業である場合、料金は税抜き料金を指すのが暗黙の了解、こちらが請求時に消費税をつけようがつけなかろうが、あちらのコストとしては差がないはずなんだよね(消費税分は回収できるんだから)。

知り合いの個人翻訳者さんがエージェントみたいな仕事もしていて、以前は消費税をつけていたけど最近はそれほどの年商ではないから消費税をつけない形態で営業しているとおっしゃっていた。相手先が個人で翻訳者兼エージェントで営業している場合は、税込みと税抜きのどちらの金額で話しているかを最初から明らかにしておいたほうがいいよね。

とはいえね、日本でもフランスでも、取引先が会社組織ならば、ほとんどの会社が消費税を納める形で営業しているはずなんだよね。そして、その翻訳会社が当然「翻訳者の中にも消費税を納める人がいる」とは思っていないらしいことがなんとなく腹立たしい(フランスの翻訳会社はそうでもないか)。まさかと思うけど、仕事を頼んだ翻訳者が消費税をつけていることを知りつつ、後になってから「え? あれ、税込み料金のつもりだったんですけど?」なんていう話になるってこと? 
日本の消費税の取扱いはよく知らないのだけど、フランスだと、消費税をつける形態にしておくと経費を計上できるので、移動が多くて経費が発生する人などは年商3万2900ユーロ(2016年の基準額)を超えてなくても消費税をつける形態で会計処理したほうが若干得かもしれない。私みたいにあまり経費がかかってない人は年商が少ないうちはどっちでもいいかもしれないけど。

こういう情報交換は、翻訳者同士、翻訳者協会などでもやっていければいいんだけど、会計協会でも研修を開いているからそちらに積極的に参加していこうと思ってる。自分ひとりでの情報収集には限界があるから、専門家のアドバイスを聞くのが手っ取り早い。


2.翻訳会社に年賀状を送ったほうがよいか。中元・歳暮の類は、受け取るほうも困るから送らないほうがよい。

自分自身は不精なので、時候のあいさつをほとんどしていない。でも、12月半ばを過ぎると、翻訳会社からあいさつメールがたくさん届く。それを見て「ああ、この会社もあったなー」と思い出すことがあるので、私から挨拶状を出せば、私のことを思い出してくれる翻訳会社もあるってことだな。

そういえば、なぜか毎年誕生日におめでとうメールをくれる会社があった。その会社からは一度誕生日の頃に、携帯ストラップみたいなものが送られてきたことがある。今は誕生日メールも来なくなったけど(その会社の仕事、ほとんどやってないしね)。さらにそういえば、翻訳会社からクリスマスの頃にお菓子をもらったことがあるという翻訳者さんもいたなあ。今も続いているんだろうか?


3.自分の考えを決める時に他の人の意見を聞くのは大事。セミナーにも行ったほうがいい。

法定翻訳の登録更新に研修受講が義務付けられているという理由以上に、(法定翻訳に限らず)他の翻訳者の皆さんの話を聞きたいと思うことから、行けそうな会合にはなるべく行くようにしている・・・のだけど、パリで開催されるものにはなかなか行けないんだよなー。先月、フリーランスになったばかりの翻訳者向けと銘打ったオンラインセミナーを受講する予定だったんだけど、技術的な問題でキャンセルになってしまった。これは、ビデオ受講できることになったので、そのうち時間を取って受講し直す予定。

2月には法定翻訳関連の団体が主催する研修の予定が2つある。どの地域でも同じような話をしているのか、地域が違えば事情も違うのか、そこらへんにも興味がある。

あと、研修に出かける時は、興味の持てるテーマを選んで出かけるんだけど、休憩時間など、他の参加者の方と話す時間も楽しいし勉強になるんだよね。具体的な話が聞けるし。


4.翻訳の質が原因で翻訳会社から責任を問われたことがあるか。翻訳に瑕疵があった場合の取扱いが契約書に書いてあるか。

海外だけど翻訳者と翻訳会社がともにソースクライアントから訴えられたケースを知っている、と書きこんだのは私
だ。何かイベント用の印刷物が間に合わなかったとかで実質的に損害が出たらしく、特殊なケースだと思う。翻訳の瑕疵が理由で裁判になったケースはこれひとつしか知らない。

あれから、翻訳会社と交わした契約書をぱらぱら確認してみたけれど、「翻訳に瑕疵があった場合」と明確に書いてあるものは今のところゼロ。「業務が正しく遂行されなかった場合」というのは何件かあって、「それが原因で翻訳会社が何らかの負担を強いられた場合」には「翻訳者にも負担を求める場合がある」という感じで書いてあった。他の契約書には、秘密保持とかソースクライアントに直接売り込みするなとか、翻訳物の知的所有権の放棄とか、そのあたりの約束事しか書いてなかった。

よくよく考えてみると「瑕疵があった場合」というのは曖昧な基準だ。そもそも誰が判断するのか。それはソースクライアントってことになるのかもしれないけれど、ソースクライアントが翻訳に直しを入れたからって、それすなわち誤訳とは限らないわけだし。だから、ソースクライアント側にも何か大きな損害が出るなどしない限りは、なかなか「誤訳」を指摘されることもないんだよなあ。(→でも、まあ、万が一の時のために保険に入っておいたほうがいいね)

これを書いていて思い出したのだけど、仕事を始めてからまだ年数が浅かった頃には、難癖みたいな直しを入れて翻訳を差し戻してくるソースクライアントさんがいたなあ。正直、それを理由に値下げを求められているような気がした。翻訳会社さんが盾になってくれてたけど、翻訳会社にとっても頭の痛い顧客だったのかもしれない。ここ数年ではそういう嫌な感じの出戻りは記憶にないのだけど、自分の翻訳が極端にうまくなったとも思わないので、もしかしたら取引する翻訳会社をそれなりに選別してきた結果なのかもしれないと思っている。(ちなみに、盾になってくれてた翻訳会社との取引も継続中)

そうだそうだ、リスク回避のため海外エージェントとの取引には要注意、という話もあったね。フランスに住んでる私から見ると、フランスの翻訳会社が国内エージェントで日本の翻訳会社が海外エージェントってことになるんだけど。 前にも書いたけれど、私が仏国内の取引先を最優先していて、次に欧州域内の取引先を優先、日本の取引先を積極的に開拓しない理由はまさにこれ。

フランスの翻訳会社との取引が大半で、法律分野の翻訳も少なくない。これが一応の専門分野なのでね。翻訳会社によっては、たとえば契約書の翻訳の末尾に「原文はフランス語。何らかの理由により作成した外国語版の内容がフランス語版の記載内容と異なる場合はフランス語版の内容に従うこと。また、翻訳者の責任は一切問われないこととする」というような文章を書き足すよう指示される。それに、当事者が複数の国に関係している場合、契約書の本文中に何語版を優先するかが明記されているものもある。というわけで、今のところはあまり怖がらずに仕事している。


5.検索のヒント、コツなど。「検索していない」と指摘されることはあるが、やり方を教えてもらうことは皆無。

皆さんもおっしゃっていたけど、もう無意識でやってしまってる作業をあらためて言葉にするのって難しいねえ。自分も、いつも必ず欲しい答えにたどり着いているわけじゃないのだけど、ある程度の時間をかけなきゃたどり着けない答えってのはあるね。いくつかのキーワードを組み合わせて検索、キーワードの組み合わせを変えて検索、分野が特定できそうならその分野に関係ありそうなキーワードも加えて検索…

英語が得意な人だったら、仏日翻訳の場合も、まずは英語で検索、見つけた英語から日本語や仏語を探すという方法も採用してらっしゃると思うのだけど、私は自分の英語力を信用していないので、よっぽどすぐに見つかる英訳(ほぼ定訳と呼んでよいと思われるもの)でない場合、英語では深追いしないことにしている。英語でキーワードを変えて探すなんて。。。(危険危険)

あと、どうしても原文の意味が分からない時(よくありすぎる略語が何のことなのか特定できない場合など)はエージェントさんに確認してる。

最近時間をかけて探した言葉があったら披露してみようと思ったんだけど、そういう仕事、最近してなかった(あれ?)


6.分野を広げる場合、リソースを注ぎ込んでモノにできるかどうかの見極め。自分の得意分野か趣味の分野を広げていくのが近道。

ここでも「リソース」が出てきたね。たしかに、40代半ばの今からまったく新しいことを学び始めるのって効率が悪いというか、現実的に時間が足りない。今までやってきた分野を少しずつ深めていく、広げていくってことになるのかな。仏語の仕事がありそうだからって、たとえばモード関連に足を踏み入れるのって、自分でもどこを目指して勉強していけばいいのか分からない。(あくまで私の話なので、ファッション好きな人はここを入口にすればいいねん)

それより、最近カモメ関連の語彙と知識が増えてるので、日本語フランス語どちらに訳すのでもいいので、いつかそういう仕事が回ってきたら嬉しいなあ。その仕事をやり遂げるには今よりもっと知識を増やさなきゃならないんだろうけどね。仕事じゃなくてもカモメについてはもっと詳しくなりたい。


7.翻訳の品質保証。統一した基準がないから、みんなが我流でやっているのが現状。自分の分野に特化したスタイルに組み上げていく必要がある。

「誤訳がない」「誤訳じゃない」だけでは不十分だもんなあ。「高品質の翻訳」とはどんなものなのかを自分でもしっかり考えてみなきゃいけないな。

それにしても、言葉の感覚を一般化することってできるのかなあ。「だ・である」を使うか「です・ます」を使うかの感覚にしたって、個人差があるみたいだから。

ずいぶん昔、カラーアナリストの体験講座に参加した時に、同じ色の組み合わせを見た時に「エレガント」「シック」「ゴージャス」「伝統的」「おとなしい」など、人によって感じ方や表現方法が違うものなんだけど、プロのカラーアナリストの感じ方や表現があまり個性的すぎるのはよくないし、誰が聞いても同じような印象を持つ言葉を使うべきだという話があった。つまり、色を見て受ける印象と自分の使う言葉を「平均的/一般的/標準的なものに近づける」という話だった。自分の感覚や表現は一般的なところに置きつつ、お客さんの使う言葉とのズレを埋めていく。これ、20年経っても忘れていないくらい衝撃を受けた。たとえばお客さんが「ポップなイメージのロゴを作りたい」と思っている時に「ポップ」なイメージの色の組み合わせを提案できるために必要なことなんだそうだ。「ポップ」を提案するつもりで「派手」とか「落ち着きがない」を提案しちゃうと仕事にならないからね。

というようなことが、多分、翻訳にも言えるんじゃないかなあ。専門用語をきっちり調べることももちろん重要なんだけど、それだけじゃない。それ以外の部分も大切というか。。。


8.自分で学ばない人には何を言っても身にならない。

そのとおり。だからというわけじゃないけど、私に翻訳の仕事のことを尋ねてくる人には、出し惜しみしないで情報公開しているつもり(だから私、何者やねん)。最初のとっかかりくらい情報提供したって何も減らないし何も困らない。その人が何の考えもなしに私が言ったまんまのことを実践したところで、うまくいかないこともある(というよりは、むしろうまくいかないものだろう)と思うわけで、後はご自分でなんとかするものだと思っている。たぶん、「自分で学ぶ人」ってのは、ここでなんとかしていく人を指すのだと思う。

自分がフランスで翻訳をしているから、私が想定するのは同じようにフランスでフランス語・日本語の翻訳をしようと考えている人、あるいは翻訳に限らず何かフランスで仕事をしようと思っている人になっちゃうんだけど、「これさえあれば」という魔法の杖みたいなもの、どんな扉でも開いちゃうマスターキーみたいなものはないんだよと強く主張したい。何を学ぶか、どんな資格が必要か、どんな道具が必要か、どんな経験を積むべきかは人によって違う。単に「フランスで働く」ではなく「フランスで○○として働く」の○○の部分を自分で決めなきゃいけない。以前は○○を目指していたが、現在は□□として働くことになったのだとしても、その仕事に満足しているならそれでいいと思うしね。「フランスで翻訳の仕事をする」のを目指すなら、何か得意分野を持ったほうがいいよ。仕事をしているうちに、自分の得意分野としてアピールできるものが変わっていくかもしれないけど、それで別にいいねんから。ワイン分野に強い翻訳者を目指していたつもりが、気付いたらソムリエやってる。。。っていう人がいたっていいねん。その仕事が好きで楽しいなら、結果オーライやん。

フランスでは寿司職人なら就職がありそうとか、看護士ならどの国でも人手不足らしいとか、そういうことだけで寿司職人や看護士を目指すのが誰にでも当てはまる解だとは思わない。ここで思い出すべきは、さっきの「リソース」なんじゃないかな。


無駄に長文になってもた。

 

 

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コメント

Cocotteさん はじめまして。
フランスでフリーランス翻訳者をしているクマノミと申します。いつもブログを参考にさせていただいております。

Cocotteさんは法律が専門分野ということですので、ご意見をいただきたく、コメントを送信する次第です。

このほど、米国の会社から翻訳者登録のお誘いをいただき、同社と翻訳者間の秘密保持契約書が提示されました。
署名前に熟読したところ、「秘密保持に関して係争が生じた際には米国で訴訟が行われ、敗訴者が勝訴者の『妥当な』弁護士費用その他の費用を負担する」という、いわゆる敗訴者負担制度が記載されており、なんだか怖くなり、署名をためらっているところです。

翻訳会社と翻訳者の間の秘密保持契約書で、ここまで厳しい条項が記載されることは普通なのでしょうか?

外国の翻訳会社だし、何かトラブルが起こると困るので(もちろん業務上の秘密は常に厳守しておりますが)、取引をやめておこうかな...と悩んでいるところです。

お忙しいところ恐れ入りますが、もしお時間がございましたら、ご意見をお聞かせ願えますでしょうか。
もちろん、最終的には自分自身の責任で判断する所存ですので...。
どうぞよろしくお願いいたします。
クマノミ

投稿: クマノミ | 2016年2月23日 (火) 08時24分

クマノミさん、はじめまして。
同じフリーランスということで、お疲れ様です。
こういうデリケートな内容をコメントで済ませてしまうのは、ちと乱暴な気もするのですが。。。

前提として、翻訳の専門分野は「法律」ということにしてますが、法律に関するアドバイスができる立場でもなければ、そのための知識も持ち合わせていないということを前もってお断りしておきます。

その上で、私ならどうするかを考えてみました。考え方はいろいろあると思うので、あくまで「私なら」です。

1.そこまでの内容が書かれた条項は、自分が過去に交わした契約にはなかったはず。

2.外国だから、万が一訴えられた場合も面倒臭そうだけど、万が一未払いなんてことがあった場合の手続きも面倒臭そうだなあと思う。

3.とはいえ、秘密保持に関する事項については、自分が気をつけていればトラブルにはならないだろうと思う。

4.本文にちらっと書いたのは秘密保持条項に関する事件ではないのだけど、翻訳会社から訴えられるのではなく、ソースクライアントが翻訳会社と翻訳者がもろとも訴えるケースもあり得るので、ただでさえ訴訟社会のイメージが強い米国(私が抱いているこのイメージが正確なものかどうかはさておき)での取引だから、とても慎重に考えると思う。米国の裁判制度や習慣がよく分からないので。

以上のような理由から、魅力的な条件を提示されても、自分だったら取引しない方向で考えるだろうな・・・と思いました。

投稿: cocotte/ourse_bleue | 2016年2月23日 (火) 23時25分

>自分が気をつけていればトラブルにはならないだろうと思う。

というか、トラブルを招かないように気をつけている、というほうが正確かな。出先などに仕事のファイルを持ち出さないようにしている理由も、これ関連だったりする。

投稿: cocotte/ourse_bleue | 2016年2月23日 (火) 23時29分

クマノミさんのお話とはまったく無関係なんだけど、

以前、日本行きの飛行機に乗ったら、隣に座っていた人が出張帰りだったらしく、その報告書を機内で パソコンで作成してた。エコノミークラスの、見たくなくても見えちゃう距離で報告書を書いてはった。それを横から読んだりしないけど、もしも私がライバル企業の関係者だったら、それとなく中身を読むかもね。私は機内でもサングラスをかけてることがあるので、寝てる振りしつつ読んじゃうな、きっと。 (普段から常にサングラス必須なのよ、目が弱いので)

私には関係ないことなんだけど、機内で出張報告書を作成するのは、私の感覚では秘密保持の観点からできないことだなあと思った。

なんてことを思い出した。

投稿: cocotte/ourse_bleue | 2016年2月23日 (火) 23時56分

Cocotteさん
お忙しい中にもかかわらず、早速お返事くださり、ありがとうございました。
貴重でわかりやすいご意見、大変参考になります。

おっしゃる通り訴訟大国のアメリカにある会社なので、フランスで取引している翻訳会社に比べ、秘密保持契約書の内容が格段に細かく厳しいのだろうと推測しております。

いろいろ調べたところ、通常米国では、一般的な訴訟では訴訟費用は敗訴者負担ではなく、各自負担らしいのですが。
少なくとも私がオファーを受けているこの翻訳会社さんは、自社に有利な(そして翻訳者に不利な)条項を設けているのだと思います。

さて、私の相談に対するご意見以外にも、秘密保持に関するCocotteさんのお話、とても参考になりました。

ご意見を参考にしながら、再度熟考して、件の翻訳会社さんに返答しようと思います。

お疲れのところ、遅い時間にお返事くださって、本当にありがとうございました。深謝いたします。

投稿: クマノミ | 2016年2月24日 (水) 08時27分

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