« 翻:12月13日~24日 | トップページ | 翻:12月27日~1月7日 »

2011年1月10日 (月)

参照用:フランスで司法通訳者・法定翻訳者になる

フランス在住で司法通訳や法定翻訳の仕事に興味のある方もいらっしゃるんじゃないかと思って、以前Mixiにトピックを立てました(→こちら)。自分の書き込みを改変して、参照用にこっちにも移植。(2014.8.8見直し+手直し)

断るまでもないけど、この記述は私の 個人的な考え を書いたものなので、そのつもりで読んでください。

翻訳者を探す場合は、右上の<メモ>欄をご覧ください。


司法通訳(や法定翻訳)をする資格を得るには、一般的には、控訴院が作成している司法鑑定人のリストに登録してもらう必要があります。

登録手続は毎年1月に始まります。初めて登録する場合の大まかなスケジュールは次のとおり。

1月 最寄のTGIにて登録申請のための所定用紙を受け取る。 受付で配布しています。 最近はネットで書類をダウンロードする方式に切り替えているところもあるので、自分が申請しようと思っている控訴院の公式サイトも確認したらいいんじゃないか。

2月末日 申請書類の提出締切

春~秋  警察による人物調査や
      検事正(代理)との面接など
      (どのように人物調査が行われるかは裁判所による)

11月   控訴院で鑑定人リストの見直し
     +新規登録者の決定

年末   登録者に通知が届く
     (最初の登録は3年、それ以降は5年ごとの更新)


司法通訳や法定翻訳も含めた司法鑑定人という職業や人選に対する批判、問題点として、「鑑定人の能力をどうやって確認するか」が指摘されています。

控訴院によって人選の方法が違うかもしれませんが、私自身(2006年エクスで登録)はそういう試験のようなものを受けていません。学歴や経歴である程度は判断されるのだと思います。

鑑定人としての専門分野は日本語です。日本で生まれ、日本語を母語として日本で育った人間なので、問題ないと判断されたのではないかと「推測」しています。フランス語のほうは、フランスで学歴があることと面接時のやり取りなどで問題ないと判断されたのではないかと「推測」するしかありません(他には理由を思いつきません)。だから、フランス企業で働いている人や翻訳の資格を持っている人は、そういった部分が評価されるんじゃないでしょうか(あくまで推測です)。

私の場合は初回申請時(この時は登録されなかった)、すでにフリーランスで翻訳の仕事をしていたので、それを実績だと見てもらえたのかもしれません。でも、同時に登録された他言語の方の中にはそういう実績のない人もいました。ここは、需要の高い言語とそうでない言語で若干違うかもしれません。でも、本当に確認されるべきなのは「通訳」や「翻訳」の能力ですよね。これは、とくに試験のような形ではチェックされませんでした。

他の分野に関しても同じで、たとえば建築士として素晴らしい実績のある人が、裁判上必要になった鑑定を正しく行ない、鑑定結果を分かりやすい報告書にまとめることができるかというと、必ずしもそうではありませんよね。


登録されている鑑定人は、任務遂行が無理、困難だと判断されれば、登録抹消されることがあります。一度抹消された人が、再度登録されるのは難しいと思われます。

抹消の理由はいくつかあります。

たとえば、鑑定人には研修を受ける義務がありまして、これを怠ると抹消理由になります。研修は専門分野に関するものではなく、司法制度や裁判手続に関するものでなくてはなりません。適性の一部は、研修を受講しているかどうかで確認されていると言えなくもないかな?

それから、通訳者と一緒に働く裁判官や警察官などの印象もあります。研修や同業者の集まりに出席すると、印象が悪くて抹消される話が出てきます。どういうことかというと、裁判や捜査をスムーズにするために通訳を呼んでいるのに、むしろ妨げになるような行動をとる人がいれば、次回以降その人は呼ばれにくくなります。「妨げになる」というのは、訳が下手すぎて意志の疎通が難しいことや、通訳にも翻訳にも登録されているのに実際にはどちらか片方しか引き受けないことなども含まれます(働いてほしい時に働いてもらえないという意味で)。職業倫理的に問題のある行動をして、登録抹消では済まず、自分が裁判の当事者になってしまう人も稀に存在するようです。

鑑定人の人選について決定権を持つ人は限られているので、たとえば1人の警察官だけで下手な通訳の登録を抹消することはできません。でも、目に余るケースの場合は、内部報告書のような形で決定権者に(直接ではないでしょうが)伝えることはあるそうです。そこまでのことはなくても、いつも不在、来てほしい時に来てもらいにくい通訳者には、そのうち連絡がこなくなります。すると、年次活動報告書に何も書けません。活動しない鑑定人は抹消、新しい人と入れ替えになることがあるようです。(鑑定人登録の事実が個人事業主の宣伝ネタにされるのを防ぐため)

というようなわけで、(いろんな意味で)能力不足の人が何年も登録され続けていくことは難しいのではないかと思います。

ただし、申請時に通訳と翻訳のどちらに登録したいかを選ぶことになっているので、どちらか一方だけでも大丈夫です(もちろん両方でもOK)。実際、どちらか一方だけで登録されている人もいらっしゃいます。


登録されるためのノウハウは、とくにないと思います。たまたま私は本業でも翻訳をしていますが、会社勤めをしながら司法通訳をしている人も大勢いるので、その点は気にしなくていいと思います。

これまで何度か研修で「司法通訳者に求めたいこと」について、いろんな立場の人から話を聞く機会がありました。司法通訳はボランティア活動ではないものの、多少はボランティア的な要素がある仕事なので、それを分かって、納得して、(一個人としてではなく)裁判機関や捜査機関の一部として行動できることが一番強く求められるのだと理解しています。

登録されるかどうかを大きく左右するのは、その地域での需要の有無と同じ言語で登録している人(ある意味ライバル)の数ですね。これは個人ではどうしようもないのですが、たとえば毎年必ず申請する、毎年研修を受ける、などの方法でやる気をアピールすることは可能じゃないか。


上にも書いたように、司法通訳・法定翻訳として控訴院のリストに登録されている人には、研修を受ける義務があります。裁判所の認可を受けた研修でなきゃならないのですが、何から始めたらいいのか分からない場合は、まずは司法鑑定人団体に問い合わせてみることをお勧めいたします。 「compagnie "experts judiciaires" 地名」などをキーワードにして検索すると、何かヒットするはずです。

基本的にすでに控訴院のリストに登録されている人のみを対象としている研修であっても、登録希望者の受講を認めていることがあるので、気になる人は問い合わせてみてはどうでしょうか。たとえば、エクスの場合、登録希望者が複数いた場合、上にも書いたように受講歴のある人を優先的に登録する傾向があるようです(あくまで伝聞です)。私自身、初回の面接時に検事正から受講を勧められて、登録される前に研修を始めました。 現に、私が加入している団体も、加入にはリストに登録されていることを条件にしていますが、研修には未登録の人も参加を認めています。


リストに登録された人がどういう身分で働いているかは、人それぞれのようです。正直なところ、日本語の場合は司法通訳と法定翻訳「だけ」では食べていけないでしょう(他の言語でも同じかと思われます)。同業者の集まりでは、言語に関係なく、ベテランさんが新米さんに「本業でサラリエをしているなら、その仕事を続けるべき」とアドバイスしているのを見聞きします。本業が別にあるなら、法定翻訳は副業ということになるのでしょうか(理屈の上ではそうなりますよね)。それで得た収入の取扱いについて確認しておく必要があれば、税務署やURSSAFに問い合わせてください。私が個人的に親しくしている人たちは、本業も翻訳・通訳の人ばかりです。PLではなく会社にしている人もいて、この辺も人それぞれです。

鑑定人の登録や研修について、時々日記に書いています。興味のある方は適当に探して読んでください。時期的には2006年以降のものです。個人的には、日本語の司法通訳や法定翻訳のできる人がもっと増えたらいいなと願っています(0人の県もあるので)。


(2013.11.6追記)
登録に関しては、こちらもあわせてお読みください。今まで無邪気にいろんな人に登録を勧めていたのだけど、勧める前に少しは考えたほうがいいのかなと今は思っている。


(この段落以下は2014.8.8追記)

メールで質問をいただいているので、いくつかここに回答。

登録されるために法律の知識は必要なのかというと、司法鑑定人(法定翻訳者を含む)は法律の専門家ではなく、それぞれの分野の専門家という立場なので、細かい知識は必要ないと思う。「それぞれの分野」というのは、私たちの場合は「日仏語の翻訳・通訳」だ。

以前どこかに書いたと思うけど、たまたま私は法学部の出身だけど、私が登録された理由はそれじゃないと感じている。法学部にいたことよりも、申請時点ですでにフリーランスで翻訳・通訳の仕事をしていたことが重視されたんだろうと思う。あと、あくまで推測だけど、たまたまその時期この地域での日本語の需要に対して登録者数が少なかったことと、同じ年に同じ地域で他の人が日本語翻訳・通訳として(おそらく)応募していなかっただろうことが私にとって有利に働いたのだと思う。現に、日本語に限らず他言語の法定翻訳者の方々の経歴を見ても(公開されている範囲で)、法学部出身の人はあまりいない。外国語学部や翻訳学部の出身で、言語関連の資格を持って普段は技術翻訳などをしている人が多く、とくに法律分野を専門とした翻訳者というわけじゃない。(他には本業が語学教師など)

とはいえ、法律や裁判に関する一般常識程度の知識がないと、実際に仕事していくのはしんどいのではないか。「一般常識程度の知識」がどんなものかと問われると困るんだけど、少なくとも、破毀院、控訴院、大審裁判所くらいはフランス語で言えたほうがいいと思うし、それぞれどういう裁判所なのかを知っておく(日本語でも仏語でも言える)くらいは一般常識の範囲に入るんじゃないか。


その一般常識をどうやって鍛えたらいいかは、人それぞれやり方があるんじゃないかな。まずはキーワードをネットで検索して適当なページを読んでみるとか、図書館や書店でそれっぽい本を探してみるとか。私自身がどうしたかを振り返ってみると、語学講座に通っていた頃の授業内容が役立ったように思う。少し分かってくると、その先が気になるので調べる。さらに先が気になるので調べる。それの繰り返しじゃないかなあ。

手っ取り早くということなら、たとえば語学学校のビジネス仏語試験や司法仏語試験など(パリ商工会議所主催のあの試験)の対策クラスで補ってみるとか、そういう教科書を使って勉強してみるとか? 他にも方法はあると思うけど。ま、とにかく、言葉を知ることは、イコールその内容を知るってことだからね。

ただ、一般論として欲を言えば、プロとして翻訳・通訳の仕事をしようと思うなら、その辺の情報収集も自力でできるのが望ましい。日本語での情報収集に限界があるなら、フランス語で探す。他の職業でなく、日本語・仏語間の翻訳・通訳を考えているならね。(とはいえ、私自身も調査の方向が間違っているなどして、欲しい情報・どこかにあるはずの情報にたどり着けないことがあるので、あまり偉そうに言えない。この段落は自分のことは棚にあげて書いた、あくまで一般論)

法定翻訳・通訳に関する情報について言うと、そもそもフランス国内の日本語の法定翻訳・通訳に携わっている人の数が限られていて、その中で(会員登録が必要なSNSなどでない公開の)ネット上であれこれ書いている人となるとさらに限られているのだから、「情報がない」のは当然じゃないかなあ。

(自分で言うのもアレだけど、私はけっこう情報をオープンにしているほうだと思う。時々書いているように、日本語の法定翻訳・通訳の人が各地にもっと増えてほしいのでね。最初のとっかかりとなる情報くらいは提供したって罰は当たるまい。ただ、私の書いたものが、他の地域の実情と大きく違っていて、結果として、かえって妨げになる可能性だってあるよ。でも、そこまで自信を持って、あるいは責任を持って書いてるわけじゃないのは、読み手の側がよくよく理解していてほしい。あくまで「とっかかり」なんだから。それに、そもそものそもそもを言うなら、「私」が法定翻訳しているという話自体が匿名ブロガーの「自称」でしかないわけで、このブログ全体が架空の話・単なる創作だという可能性だってあるんだから)

あとは、その時その時で必要になった知識を補っていけばいいんじゃないか。司法鑑定人ならば知っておくのが望ましい裁判手続きなどについては、鑑定人を対象とした研修が開催されているので、そちらを受講。(どっちみち研修受講は司法鑑定人の義務なわけだし)

繰り返しになるけれど、日本語の法定翻訳者として登録される場合、日本語とフランス語の運用能力が一番重要なので(本来なら翻訳能力・通訳能力と言いたいのだけど)、法律のことはあまり気にしなくていいと思う。本当に。


じゃあ、逆に、翻訳経験がほとんどなくて法律知識の方をアピールしたい場合はどうなんだろうか。たとえば、翻訳者というよりは法律家と呼ぶほうがふさわしい経歴を持つ人の場合。ほんとに余計なおせっかいな話だけど、以前そういう人に会った時に私なりに考えてみた。

裁判所は、法定翻訳者として法律家ではなく翻訳者を選びたいと思っているはず。そういう意味で、自分の経歴を裁判所がどのように判断するかを考えたらいいと思うし、逆にどんな風に経歴を提示したらいいかも考えてみたほうがいいんじゃないかと思ったりする。その意味では、たとえば法学部に留学中の学生がダメもとで登録申請してみようと思いついた場合なんかも、滞在資格が学生であること、給与所得者でも個人事業主でもないことなどを裁判所がどう受け取るかを考えてみたらいいと思う。(もちろん世の中は一般論だけで動いているわけじゃないので、無理だと言い切ることはできないよなあ。私が知らないだけで、法学部で教える傍ら法定翻訳もしている、てな人がいないとは限らないから。)

私自身、登録にあたっては、法学部のことより職業としての翻訳経験のほうが重視されたのだろうと感じているのは上に書いたとおり。実際に何がどう評価されたのかは裁判所の人にしか分からないことなんだけど、私としては学歴ばかりが目立たないように考えて履歴書を書いたつもり。

法定翻訳者として求められるであろう役割を理解した上で、登録申請するかどうかを決める。で、申請するなら、自分がその役割を果たせる人間だとアピールする。言葉にすると、そういうことになるんじゃないかな。


法定翻訳者になるための資格がある、という噂もある「らしい」。結論を言うと、そんな資格は「ない」。法定翻訳者じゃない誰かが適当なホラを吹いているだけじゃないのかなあ(自分はその資格を持っているが人数の関係でまだ登録されない、みたいな。その話の真偽や、その話が本当ならどこで資格取得できるかを私に尋ねてくる人の話を総合すると、どうもそういう感じ)。でも、本当に気になる人は裁判所で確認したらいいと思うんだよね。実際、私は、すいぶん昔の話だけど、どうしたら法定翻訳者になれるか分からなかったので(当時はネットで情報を探すなんて、とてもそういう状況じゃなかったし)、裁判所に直接質問しに行った。裁判所の人はちゃんと答えてくれたよ。

司法鑑定人向けの研修と銘打ったものが開催されているのは事実。だけど、それは司法鑑定人に「なる」ための対策講座ではない。鑑定人(翻訳・通訳を含む)のリストに載っている人が果たすべき義務に研修が入っているのだけど、どんな研修でもいいわけじゃなくて、裁判所の認定を受けた機関の研修でなきゃいけないので、そういう宣伝の仕方になっているだけだろう。そういう研修が登録希望者の受講を認めている場合もあるけれど、登録前の受講は「必須」じゃなくて、あくまでも「プラスアルファ」。とはいえ、その場で聞こえてくる情報が実質的な「対策講座」にならないとも限らないので、興味のある人は、機会があるなら試しに受講してみたらいいと思う。


1回目の申請で登録されなかった場合、2回目以降の申請に支障があるのかどうか。

申請したが登録されなかった場合、その理由は本人には通知されず、登録見送りの回答だけ届く。今まで見聞きしてきた話から勝手に「推測」してみると、登録されない理由としては、個人的な理由による部分と日本語の需要の有無や傾向による部分があるんじゃないか。

個人的な理由(極端な例では労働許可を持っていないなど)で登録されなかった場合、その理由が解消されない限りは2回目以降も登録の可能性はとても低い。日本語の需要が理由の場合、つまり日本語の翻訳者は現在十分足りていると控訴院が判断している場合、状況が変わらない限りは登録されにくいと思われる。

私自身は、1回目の登録申請では面接時に「基本的に応募1回目の人は登録しない」とはっきり言われた。鑑定人協会が研修を開催しているから、まずそれを受講してきなさい、という話だった。上に書いた内容と矛盾するけどね。でも、別の年だと、受講歴がないまま1回目の申請で登録された人もいる。だから、この辺はその年の登録担当裁判官の考え方にもよるのではないか。


(この段落以下は2016.1.22追記)

上のほうにも少し書いたけど、登録者0人の地域だったとしても、登録を希望した人が必ずしも登録されるとは限らないかもしれないので、最近はあんまり無邪気に勧めるのはよくないのかもしれないと思っている。将来また考えが変わるかもしれないけど。。。

興味のある人はこのへんもあわせて読んでもらえると、その理由が分かってもらえるしれない。とはいえ、これらが「規則」や「原則」だというわけではないし、地域によっては様々な事情があるのだろうし、そもそも私が全国的な傾向を網羅的に把握できてるはずもないのだけど(そもそも、このブログが壮大な創作という可能性もあるしね)

法定翻訳者の登録関連
警察が通訳者に求めること

 

 

 

 

|

« 翻:12月13日~24日 | トップページ | 翻:12月27日~1月7日 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 翻:12月13日~24日 | トップページ | 翻:12月27日~1月7日 »