先日、同業者の集いに参加してきた。正確に言うと、エクス控訴院に登録されている司法通訳の協会があり、それの総会に参加したのだ。私は警察や裁判所からの依頼で仕事をすることが少ないので、他言語の人たちの話を聞くと、いろいろ考えることが出てくる。論文にも関係ある話だし、書いておけば誰かが読んでくれる、意見をくれると思うので、以下とりとめなく書いてみる。
司法通訳(法定翻訳を含む)の仕事は、警察、裁判所、税関などの機関から要請されるものと、個人から直接依頼されるものがある。私の場合、前者は日本人が盗難被害に遭った場合の付き添い通訳や、日本に犯罪人の引渡しを請求するための書類の翻訳といったものが多い。これは、一律の決まった料金表にしたがって支払われる。幸いなことに私はこれまで県外に出かけて通訳したことはないけれど、言語によっては他県から呼び出されることもあるようだ。私がひっそり司法通訳各県1人運動をやってるのは、これも関係ある。後者(個人から直接依頼されるもの)は、滞在許可証申請や結婚のための書類翻訳、あとは結婚式の立会い通訳くらい。結婚式に立ち会う通訳は司法通訳者でないとダメだという市役所が増えてきているらしく、やっぱり各県1人はいてほしいところ。個人から直接依頼された仕事の支払いは、こちらの設定した金額で払ってもらっている。世間様の一部には法定翻訳や立会い通訳の料金が高すぎるという批判もあるようだ。個人的には、自分の料金が高すぎることはないんじゃないかと思ってるけど、どうかな? ま、頼むほうにしてみれば、もっと安い人を探したくても、各県1人未満の現状ではそれも難しいことだから、言い値のまま払っているんだという感覚を持ったとしても仕方ないかな。
市役所や裁判所など、通訳が必要となる日時があらかじめ調整できる場合はいいけれど、警察の仕事はいつも突然連絡がある。そして、警察は登録されている司法通訳の都合がつかない場合に備えて、独自のリストを作っていることが多い。
そういえば、先日、司法通訳の仕事について情報交換した学生さんは、警察からの身元調査があった際、その言語は通訳が不足気味だから登録されていなくても必要があれば連絡させてもらうことがあるかもしれない、とわざわざ言われたんだそうだ。
原則として登録されている司法通訳を使わなくてはならない刑事裁判と違って、警察は誰に仕事を頼んでもいい。司法通訳として登録されていないだけでなく、プロとしての登録も何もしていない人に仕事が回っていることもあるようだ。もちろん、警察の手続きに通訳として立ち会う場合は、その都度、公平な立場で任務にあたるという意味の宣誓をするのだけど、ひとつ疑問がわいてくる。
司法通訳の存在意義の1つに、被疑者の人権を守ること、というのがあるはずだ。だからこそ、登録されている司法鑑定人(司法通訳含む)には定期的に研修を受けて、知識の面でも、職業倫理の面でも、一定のレベルを保つことが求められているんじゃなかったのか? それから、プロとしての登録をしていない通訳者(平たく言うと不法就労している人ってことだね)を警察が働かせるというのは、それが例外的に1件、2件というならともかく、常態化しているのは何かが間違っているような気がする。
(ちなみに、フランスで一般的に司法通訳と名乗ってよいのがどういう人なのかはこちらを参照:http://katasuminikki.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_5fc3.html)
登録していない通訳についてはもう1つ問題がある。未登録の通訳への支払いが登録通訳よりも優先的に行われていることだ。そりゃ、例外的に手伝ってもらったのだからきちんと支払いますよ、という姿勢はまったくその通りだと思うのだけど、上に書いたように不法就労が常態化しているとなると、話はまったく違ってくる。
それから、つい最近こんなニュースがあった。
http://fr.reuters.com/article/topNews/idFRPAE55H0GF20090618
ヴェルサイユ控訴院は、5月末頃、今年の予算を使い切ってしまったのだそうだ。予算がなければ、必要な司法鑑定をしないで済ませることになったり、またはその費用を支払えなかったりして、「公正な裁判」が実現できないかもしれないなあ。
続く。
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