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2009年4月19日 (日)

フリーランス翻訳者の責任の範囲

過去に何度か、翻訳会社に登録するためのトライアルなるものを受けたことがないと書いた。私と係わりになった会社がたまたまそういうところばかりだったのかもしれない。翻訳会社から、これは案件獲得のためのトライアルだ、と説明を受けて提出したトライアルは何度かある。日本で翻訳している人や日本の会社と取引している人の話によると、多くの翻訳会社が登録のためのトライアルというものを実施しているらしい。日本の会社とフランス(ヨーロッパ)の会社では、何かが違うんだろうか?

まったく無条件で登録してくれた翻訳会社もあるが、求人メールなどを見ていると、登録に際して「翻訳(または外国語)に関する免状」を求める会社はたしかにある。「翻訳に関する免状」とは、私の理解では、たとえば大学で翻訳専攻だったとか外国語学部だった、というようなものだ。ニース大学にも外国語学部(LEA)はあるけれど、翻訳専攻の学科はあるのか?(よく知らない) でも、世の中には翻訳学士という学歴を持つ人もいるので、そういう人しか採用・登録しないという会社も存在するわけだ。どっちみち、私は外国語学部ですらないし(実は大阪にいる頃に社会人入学したが諸般の事情で2年で中退した)、翻訳関連や外国語関連の免状を求める会社はスルーしてきた。

翻訳(または外国語)に関する免状でなくとも、学歴として大学卒以上であることを求める会社はそこそこあるような気がする(あくまで私の見聞きする範囲での話)。自称でないことを確かめるためか、免状をスキャンしてメールに添付して送れというところもたまにある。高等教育機関での実績を重視するのは、理解力などの最低限の保証ということかもしれない(言うまでもないけれど、大学卒未満の人には理解力がないという意味ではないので悪しからず)。学歴で人間の能力が決まるわけではないけれど、いくらバイリンガルだからといって高校を出たばかりの社会人経験のない人に契約書の内容が理解できるかというと、難しい部分はあるんじゃないか(あくまで一般論)。

私が取引している翻訳会社はほとんどがフランス国内にあり、あとは西欧諸国の会社が多く、わずかに台湾やニュージーランドなど時差のある国がある。社内に日本人スタッフがいると判明しているのは1社のみ、その他の会社は今までのやり取りでは日本人スタッフの存在は確認できていない。フランス(ヨーロッパ)で日本人が作った翻訳会社は別として、そもそもフランスの翻訳会社に日本人を雇わきゃならないほどたくさん日本語の案件があるとは思えない。中国語や韓国語などの翻訳を扱っている会社に日本語の依頼があって、それを機に日本語翻訳者を探したら私がひっかかった、のかもしれないな。

日本語スタッフがいない会社は、日本語翻訳の質をどうやって担保しているのかというと、私が思うに、この翻訳者の仕事なら安心できる、というものを除いては別の翻訳者にチェックさせているのではないか。というのは、私のところに回ってくるプルーフリーディングの多くはこれで、同じ翻訳者のプルーフを何度もやっているし、私の翻訳も誰かがプルーフしているのは確かで、プルーフの時間を確保するために翻訳の納品を半日早めてほしいというような話が時々ある。大きな文書の場合は、プルーフのために、半分できたところでまず提出して、というような気遣いや交渉もするし。とにかく、翻訳会社から顧客に翻訳を渡す時点でちゃんとしたものにしておくことは、翻訳会社の最低限の仕事だと思う。

そういう意味では、翻訳者と翻訳会社は協力しあって仕事していることになるんだけど、翻訳者の責任は、直接契約関係にある翻訳会社に対して、少なくとも最低限の品質の翻訳を納品すること、に尽きる。独立業者である以上、自分の責任は果たさなきゃならない。その仕事を引き受けるか断るかを決めるのは自分だし、引き受けた以上は泣きながらでも仕上げる。

逆に言うと、翻訳者の責任は直接契約関係にある翻訳会社に対してだけで、それより向こうにいる人たち(ソースクライアント)に対する責任を翻訳者が負う必要はないはず。つまり、私は直接的に関係を持っていないソースクライアントから拙い翻訳が原因でソースクライアントが被った損害を賠償するよう求められる理由はないってことだ。ただし、ソースクライアントが下請けに請求=私の取引先である翻訳会社に請求、私の取引先である翻訳会社が私に請求、ということは十分あり得るけどね。(あ、念のために書いておくけど、今私に何がしかの請求がきているわけじゃないので、皆様ご心配なく)

ついでに言うと、翻訳会社がソースクライアントからの支払いが遅れていることを理由に翻訳者への支払いを遅らせることも、本来はあってはならないことだ。それは翻訳会社とソースクライアントの間の契約に従って解決されるべき問題なんだから、契約に無関係の第三者(翻訳者)を巻き込むものじゃない(契約法=民法の基本ですな)。

ま、小さな会社の場合、ソースクライアントからの支払いがなくては払いたくても払えない場合があるのは理解できるので、そこらへんは事情を説明してもらえればこちらも納得するし、ちゃんと説明してくれる会社は遅れても支払ってくれる印象。いくら連絡しても何の事情の説明もなく、支払いの遅れをソースクライアントのせいにして毎回必ず渋る(渋った挙句払わない)ような会社はブラックリストに載せてある。

 

 

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コメント

ブラックリストにのせたい未払い会社があるのですが、フリーランスのそういった共有サイトはあるのでしょうか?

投稿: Pico | 2018年3月19日 (月) 13時06分

Picoさん、初めまして。

未払いだなんて、ほんとに腹が立ちますよね。

自分の心の中のブラックリストでなく、共有したいというお考えなら、翻訳関連ならたとえばこちら→http://www.proz.com

Blue Boardのページでは翻訳者が翻訳会社を評価し、コメントを書き込みできます。閲覧や書き込みをするには登録が必要なのですが、評価が低い翻訳会社は必ずと言っていいほど支払いの問題が発生しているようです。逆の言い方をすると、支払いに問題がある会社は、仕事の打診から案件完了までのやり取りもスムーズにいかないことが多い、ということになるのでしょうか。

気をつけていても、うっかり変な取引先にかかわってしまうこともありますもんね。用心するに越したことはありませんね。お互いに。

投稿: cocotte | 2018年3月21日 (水) 02時42分

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